祈りが歌になり、そしてゴスペルが生まれた

もはや誰もが一度は聞いたことのある言葉、ゴスペル。

音楽のジャンルの一つで、発祥はアメリカ。昔々、奴隷制のある時代に、アフリカ大陸などから新大陸アメリカに奴隷として連れて来られ、自分がなぜここにいるのか、なぜ言葉もわからない土地で働かされているのか、自分の将来はこれからどうなるのか・・・まるでわからない状態のまま日々を生きていた黒人の人たちが、やがて<雇い主>たちの宗教であるキリスト教を学び、言葉を学び、自分たちなりに自分たちの運命を理解しようとし、許される範囲内で、自分たちの人生を考えるようになったとき、彼らの心の歌が生まれました。彼らの心の祈りが声に乗って、空気と触れて、空に解き放たれ、メロディを持つようになりました。そんな風にして生まれた音楽が、いまゴスペルと呼ばれる音楽のジャンルです。神様への祈りという形で歌い継がれてきたので、教会で歌われる唄として発展してきた歴史があります。独唱のものもありますが、彼らの境遇は皆、似かよった辛さ、苦しさがあったためか、多くの友人同士の合唱といった形態の曲がほとんどです。同じ想いの人間同士が、隣同士で、お互いの体温を感じながら、同じ苦しみを歌い、同じように救いを求め、お互いに「独りじゃない」という勇気を与えあう音楽です。心からの想いを乗せた歌だからこそ、信じている宗教が違っても、暮らしている環境が違っても、聴いていると、同じ人間として、深く心に響きます。現代では 奴隷制こそなくなりましたが、人間の人生は相変わらず苦悩に満ちています。祈りは、誰の心にも、口元にも、人知れず小さく、絶えず、呟かれています。世界中で。その祈りをたった一人で、誰にも知られないように涙をこらえながらしまっておくより、同じように悲しみや苦しみを抱えた<仲間>たちと共有し、天へ向かって声をあげて解き放ち、大丈夫だよと支え合うように歌い合い、勇気を与えあう歌・・・ゴスペルは、そんな音楽です。

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