アメリカ発祥のゴスペルルーツと音楽的意味

ゴスペルとは、アメリカの黒人教会で歌われていた歌を意味します。アメリカの黒人の多くは、アフリカ大陸から奴隷として、つれてこられました。その多くは、人間的な扱いを受けることができず、厳しい環境で生き、働くしかなかったのです。黒人たちは、そのような厳しい環境下でも、白人の主人から聖書を教わるようになります。聖書を教わった黒人たちは、やがて、主人の目を離れて、こっそりと集まり、自分たちだけで歌う場所を持つようになります。そうした宗教的な、祈りの歌が、ゴスペルの由来となったといわれています。黒人たちの絶望から生まれたゴスペルの特徴は、もともとハーモニーやリズム、即興性などにありました。こうした特徴には、故郷アフリカの音楽的伝統が根付いているといわれています。黒人たちは、もともと、聖書に記された「奴隷制からの解放」を願う気持ちを込めて歌っていたのです。このように、黒人たちはゴスペルを歌うことによって、奴隷制という厳しい環境から、一刻も早く開放されることを願ったのです。ところが、現実はゴスペルに込められた願いのようにはなりませんでした。奴隷制の存続をめぐって、アメリカが南北に分かれて内戦となった南北戦争やリンカーンので奴隷解放宣言はあったものの、実質的には黒人への差別は色濃く残ったままでした。黒人初の大統領、オバマ大統領が誕生したものの、白人と黒人の間には、大きな経済的格差があるといわれています。現代までゴスペルが歌い継がれているのも、そうしたアメリカの歴史的背景があるのではないでしょうか。ゴスペルの伝統は、ポップス界にも多くの歌手を送り出しています。世界的歌手となったマライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンらも、もともとゴスペル音楽にルーツがあるといわれています。グループ音楽で世界中を席巻した、アース・ウィンド・アンド・ファイアーも、ゴスペルやジャズ、ファンクをフュージョンした音楽です。

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