黒人奴隷魂の叫び「ゴスペル」意味は差別ない人間社会実現を歌う

「Sister Act(邦題:天使にラブソングを)」で、ウー・ピー・ゴールド‐パークが先導してシスター達と合唱している姿が印象的である。「ゴスペル」と聞くとそうした光景が浮かんでくる。

大人数で福音の意味を込めて歌うゴスペルにはアメリカ発祥の音楽ジャンルであり、宗教的意味合いが深い。

ゴスペルが生まれる背景には少し物悲しい歴史がある。奴隷としてアメリカ大陸に渡ったアフリカ人達は言語や宗教と言った独自の思想を奪われた。彼らの心の叫びを現したのが音楽であり、改宗を経て神に捧げる独自の讃美歌として生まれたのが「ゴスペル」である。そこには黒人霊歌と評されるように、スピリチュアルなテイストを盛り込んだ「訴え」も共に体現されるようになった。

主にアメリカのキリスト教の教会で礼拝の場面で歌われることが多く、人種の垣根を越えて歌われるようになって行った。元々の出発点が、そうした歴史的背景と宗教が絡んでいる事から、軽々に一つのカテゴリーとして纏める事は出来ないが、そこから生まれたミュージシャンも多い。サム・クック、レイ・チャールズ、ジェームス・ブラウン等がそうだ。発展して「ソウル」がメジャーになったのも、ゴスペルが浸透していた土壌があるからで、ゴスペルを起点とした音楽ジャンルも多数存在する。それは、精神性だけではなく、表現の場として、また、政治や人間的に純な欲求を満たすための音楽でもある。

黒人教会が礼拝の際に合唱される印象が強いが、白人のクリスチャン等も歌う。

ゴスペル自体もその儀式性からも分類が出来るようで、早いビートで歌い上げる「プレイズ・ソング」、ゆったりとした曲調の「ワーシップソング」、メッセージ性に富んだ「インスピレーショナル」、礼拝最後の「オルターコール」、寄付の価値を高める「オッファリング」、聖餐の儀式に用いられる「コミュニオン」等の機能的な役割がある。

他の音楽ジャンルも背景には、様々な世相的な要素が発端となって発生した音楽がある。フォーク、ジャズ、ロック、クラッシック。それぞれに主張したいメッセージが込められていて、そのルーツを探ると明確な主張が見えてくる。

ゴスペルは専ら「黒人」の暗く悲しい奴隷時代を癒すべくメッセージを発信している。その魂を忘れずに後世に残す為の音楽ジャンルと言える。

タイトルとURLをコピーしました