苦しみと悲しみから生まれたゴスペルの歴史

ゴスペルのルーツを探ると、アフリカからアメリカに奴隷として連れてこられ、自由や言語も宗教もはく奪され、労働を強要された黒人たちの苦難と屈辱と涙の歴史へと辿り着きます。

では、その苦難の歴史から、どのように現在のゴスペルが誕生していったのでしょうか。

最初の歴史は17世紀へとさかのぼります。

奴隷として連れてこられた黒人たちの中に、白人の主人から聖書を習う者が現れました。

聖書の教えに、救いを見出した奴隷たちは夜に集まり、歌い踊り、祈るようになりました。

その場所のことを、「Invisiteble Institution」(見えない教会)と呼びました。

歌と踊りは、アフリカ的な音楽とヨーロッパの賛美歌が混ざり合い、スピリチュアルズ(黒人霊歌)と呼ばれる音楽が誕生しました。

その後、南北戦争(1861年~65年)を経て、奴隷制は廃止されましたが、差別意識は根強く、生活の改善はさほどされなかったようです。その苦しみもまた、今日の黒人音楽のルーツの一つとなり、ゴスペルへと繋がっていきます。

1900年~1920年代にブルースやジャズなどの黒人音楽が生まれ、1930年代には現在のゴスペルが誕生しました。

ゴスペルを最初に作ったのは、トーマス・A・ドーシー。現在ではゴスペルの父と呼ばれています。

牧師の息子で、ブルース・シンガーとしてデビューしましたが、1930年代初頭に数多くの曲を書き、各地の教会を回り、普及に努めたそうです。その曲が今のゴスペルです。

1950年代には楽器などの設備が足りない黒人用教会のために、ザ・レイバンズやザ・フラミンゴズといったアーティストがアカペラのゴスペルを広めました。

その後、ゴスペルの影響を受けた黒人アーティストたちが世界レベルで多くのヒット曲を世に送り出しました。

レイ・チャールズやジェームス・ブラウンなどはゴスペルとR&Bを融合させ、ソウル・ミュージックを生みました。

サイモン&ガーファンクルの「明日にかける橋」などもゴスペルのインスパイアされたと言われています。

1990年代にはクリスチャン的なテーマをラップ歌詞に乗せたゴスペル・ラップと呼ばれるものも誕生しました。

日本では1992年に公開された映画「天使にラブソングを」で、ゴスペルがブームになり、2000年代には幼いころに教会でゴスペルを歌っていたジャズ・シンガー綾戸智恵や黒人音楽の影響を受けたミーシャなどの歌手により、再び極光を浴びました。

現在では、全国にゴスペル教室があり、日本でも多くの人々が親しんでいます。

タイトルとURLをコピーしました