「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」などの曲で知られるゴスペルとは、もともと英語で「福音」を意味する言葉です。現在では、ポピュラーミュージックとして知られるゴスペルとは、宗教音楽の一種として広がりました。ゴスペルの歴史は古く、アメリカに送られてきたアフリカ出身の黒人奴隷が、自然発生的に歌い始めました。黒人奴隷たちに、なぜ音楽が必要になったのでしょうか。それは、彼ら黒人奴隷の置かれた環境があまりに苛酷だったためです。彼ら、黒人奴隷たちには、まったく自由が与えられませんでした。生きるか死ぬかは、農園の白人経営者しだいだったのです。毎日毎日、農園での重労働に従事せねばなりませんでした。そうした過酷な生活を支えたのが、ゴスペルだったのです。彼ら黒人奴隷は、白人の主人たちの目を逃れて、教会で歌うようになります。その歌詞は、聖書の一節に由来していました。このように、黒人奴隷たちの祈りの歌が、ゴスペルの起源となったのです。ゴスペルの特徴となっているのは、黒人奴隷たちのルーツであるアフリカの音楽の影響を曲に色濃く残していることです。ゴスペルにはアフリカ音楽独特の、ハーモニーやリズム、即興性などが影響しています。そしてゴスペルは、現在の音楽には、ロックやブルースにも、大きな影響を与えました。このゴスペルは、おもに黒人たちが歌い継いできた「ブラックゴスペル」と、白人たちが歌うようになった「ホワイトゴスペル」にわかれるようになりました。黒人たちの歌うゴスペルは、経済的な理由から、十分な楽器が用意できなかったこともあり、歌だけのアカペラを進化させることとなりました。このアカペラの伝統は、ジェームス・ブラウンやレイ・チャールズといったソウル・ミュージックというジャンルを築くことにもつながりました。現代まで、ゴスペルが発展してきたのは、このように、黒人をめぐるアメリカの歴史的背景が大きく作用しているよい割れています。そして、現代の音楽にも大きな影響を与えることとなったのです。