ゴスペルは、最近では日本各地でもサークルができるなど、人気の音楽となっています。サークルには、子供から大人まで、多くの人たちが集まってきています。本場アメリカでは、マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストン、アース・ウィンド・アンド・ファイアーなど、多くのゴスペルにルーツをもつシンガーやグループが誕生しています。しかしながら、ゴスペルの歴史は、けして明るい物語ばかりで彩られているわけではありません。もともとはアフリカからアメリカにつれられてきた、黒人奴隷たちが歌い始めた音楽であったといわれています。その様子は、黒人への差別を描いた映画などにも描かれています。米国のハリウッド俳優、ブラッド・ピットが手がけた「そして夜は明ける」という映画にも、やはり黒人が祈りのために、歌を歌う様子が描かれていました。この映画は、ひょんなことから奴隷にされてしまった黒人を主人公にした映画です。この映画で主人公は、奴隷として農場で理不尽な扱いを受けます。このように、当時の黒人奴隷たちには自由がありませんでした。そのせめてもの救いにと、ゴスペルの源流となる音楽がうたい始められたのです。黒人奴隷の多くは、非人間的な扱いを受け、厳しい環境で生きるしかありませんでした。そこで、白人の主人の目を逃れて、ひそやかに集まり、自分たちだけで歌うようになります。ゴスペルは、聖書の言葉を元に、歌詞がつくられていったといわれています。白人からかくれて歌い継がれてきた歴史があるためか、ハーモニーや即興性などにゴスペルの特徴があります。黒人たちはゴスペルを歌うことで、奴隷制から早く解放されることを祈ったのです。政治的には奴隷解放宣言や公民権運動によって、黒人への差別は解消されるかにみえましたが、残念ながら白人と黒人の間には、大きな格差があるようです。現代までゴスペルが歌い継がれているのも、そうした歴史が影響しているのではないでしょうか。所は変わって、日本でゴスペルが人気となっているのも、一体感や健康的なことが人気の背景となっているのでしょう。時代や場所が変わっても、ゴスペルは歌い継がれているといえそうです。