ゴスペルミュージックといえば、教会、キリスト教というイメージがあります。
なので、教会から生まれた歌だと思われる方が多いです。
ですが、このゴスペル、実は教会で作られた歌というわけではありません。
確かに、教会、キリスト教といったものが関わってはいるのですが、
それ以上に、アメリカという国の歴史が関わっています。
皆さんご存知のように、アメリカは南北戦争が終わるまで、
奴隷制度を敷いている、奴隷制の国でした。
その奴隷、正確に言えばアフリカの大地から連れてこられた奴隷が、
キリスト教の教えと聖書に出会ったことで生まれたのが、ゴスペルだったのです。
なので、ゴスペルはキリスト教の歌であると同時に、
黒人奴隷の歌でもあります。
もちろん、今のアメリカに奴隷制度はありませんし、
ゴスペルという歌が持つ意味も、当時とは違いますが、
それでも、もともとのゴスペルが奴隷たちの聖歌であったことは
今でも大きな意味を持っています。
南北戦争後、奴隷解放と共にゴスペルは独自の進化を遂げていき、
最終的にはジャズやロック、
各種ブラックミュージックなどと融合し、
今のゴスペルが生まれましたが、
それでも、もともとのゴスペルは奴隷たちの聖歌であったという事実が
薄れたわけではありません。
解放を願う奴隷たちの願望から生まれた救いの音楽、
それがゴスペルミュージックなのです。
ちなみに、ゴスペルにはもとになったものがあります。
それがスピリチュアルと呼ばれる歌です。
このスピリチュアルは、黒人たちが教会や他の場所で作った、
ゴスペルよりも宗教色の濃い宗教音楽ですが、
この歌が、ゴスペルのもとになっています。
聖書などに書かれている宗教的なネタを歌詞にしている、
宗教音楽であるスピリチュアルと、
色々な音楽と混ざりあって進化したゴスペルは、
もはや似て非なる音楽と言えますが、
この2つが、元は同じものだったという歴史は
知っておいて損はないでしょう。
スピリチュアルがなければ、ゴスペルという音楽も
どうなっていたかわかりませんから。