黒人の歴史とともにあるゴスペル

ゴスペルの発祥を知ろうとしたとき、同時に黒人の歴史も知ることになります。ご存知のとおりアメリカにいるのは世界中のさまざまなルーツを持っている人たちです。元々住んでいたネイティブアメリカン、イングランドから来た入植者たち、その後世界各国からアメリカの地を踏んだ移民たち、そしてアフリカ大陸から連れてこられた黒人の奴隷たちです。ゴスペルというのは、そのアフリカ系アメリカ人たちが、心の拠り所を求めて口ずさんだものから生まれた音楽だといわれています。故郷や離れて暮らす家族への気持ち、絶望に屈しない心、明るい未来への希望、そうした魂の叫び声が歌として表現されてきました。
そして1960年代に公民権を得るまでいろいろな場面で差別を受けてきた黒人たちは、神様に祈りを捧げようと思ってもアングロサクソン系のアメリカ人がいる教会に入ることすら許されていなかったので、彼ら独自の礼拝集会を開いていたのです。いわゆる黒人教会と呼ばれるもので、彼らは彼らだけのコミュニティの中で神様に捧げるゴスペルを発展させていきました。そのため、その後世界中に広まったゴスペルは宗教音楽としての色合いが強くなっています。といっても賛美歌の雰囲気とは全く違い、明るく笑顔で生きる喜びが表現されている、より庶民の感覚に近い親しみやすい音楽です。
日本でもクリスマスの時期や結婚式、教会やイベント、ライブステージでゴスペルのハーモニーを耳にする機会が増えてきました。アフリカ系アメリカ人の誇りを形にしたゴスペルは、テレビや映画、CDなどで聴くのはもちろん、実際に歌っている人達の歌声を目の当たりにしたら一気に引き込まれてしまうほど素晴らしいものです。何となく知っていたけれども生で聴いて自分も歌ってみたくなったという人が少なくなく、ゴスペルサークルやゴスペルを習えるスクールの人気がどんどん高まってきています。
機会があればライブ会場や日曜礼拝の教会などを覗いてみてください。黒人達の思いが詰まった曲や歌詞に触れることで、心に何かが響いてくるはずです。

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