教会音楽から現代に続くゴスペルの曲の数々

ゴスペルとは、英語で福音や福音書を意味する言葉です。17世紀にアフリカ大陸から奴隷として連れてこられたアフリカ系アメリカ人の苦難に満ちた歴史を背景に、教会文化の中で育ってきた宗教音楽です。

まず、どのような種類があるのか見てみましょう。ゴスペルとは教会音楽ですので、礼拝の中での役割により、大きく5つに分けられます。

①プレイズソング 礼拝の最初に会場の全員で歌う曲です。早く躍動的な曲調が特徴で、1~3曲歌われます。主に神様を讃える歌詞で、華やかで盛り上がる曲が多く、日本でゴスペルソングというとこのプレイズソングを意味することが多いです。

有名な曲としては、「This is the day」「Glory Glory」などです。

②ワーシップソング 通常プレイズソングの後に歌われます。集まっている人々が各々を広げたり、祈るように手を合わせたりして神様に祈りを捧げるように厳かに歌います。有名な曲は「Thank You Lord」などです。

③インスピレーショナルソング 通常は牧師の説教の前に、クワイヤー(聖歌隊)によって歌われます。聖書の内容に基づいた、他者を励ますメッセージや自分が神にどうやって救われたかを語ったりします。聖歌隊の中の歌唱力のあるメンバーがソロで歌うこともあります。

④オッファリングソング 礼拝の途中で、寄付を集めるときに歌われます。神様の恩恵を思い起こさせるような歌詞の歌を躍動的に歌います。

⑤オルターコールソング 礼拝の最後に、まだ入信していない人や関心のある人を牧師が祭壇(オルタ―)に呼ぶ際に歌われます。ゆったりした曲調で、神様に自分を捧げるといった内容の歌です。

では、日本でも有名なゴスペルの曲はどのようなものがあるでしょうか。ゴスペルと聞いて多くの人はW.ゴールドバーグの「天使にラブソングを」の「Oh Happy Day」を思い出すでしょう。実はそれ以外でも耳にしたことのあるゴスペルの曲は意外と多いのです。

「Lean On Me」 カーク・フランクリン

現代のゴスペル歌手の中で最も人気の高い歌手であるカーク・フランクリンの曲です。イギリスの人気ロックバンドU2のボノ、メアリー・J・ブライジなどの有名ミュージシャンが参加しています。

「Total Praise」ブルックリン・タバナクル・クワイヤ

リチャード・スモールウッド作のこの曲は荘厳な宗教音楽らしさが感じられます。

「If You See My Savior」トーマス・A・ドーシー

ゴスペル音楽の父と言われたトーマス・A・ドーシーの初めてのヒット曲です。公民権運動よりもずっと昔、1926年に作られました。

「Amazing Grace」

言わずと知れたゴスペルの有名曲です。奴隷貿易を行っていたJ・ニュートンが、船が難破しかけて改心して牧師となって作った曲です。

「Soon-Ah Will Be Done」

すぐにこの苦しみは終わる、と歌われるこの曲には、過酷な労働を強いられた奴隷時代のアフリカ系アメリカ人の悲痛な叫びが感じられ、ゴスペル音楽の背景に思いを馳せてしまいます。スピリチュアルと言われるこのような黒人霊歌が発展してゴスペルになるのです。今では、合唱曲として歌われる有名な曲です。

「ジェリコの戦い」(Joshua fit the battle of Jericho)

これも同じくスピリチュアルで、合唱曲として人気の高い曲です。

ジェリコとはイスラエル近くの古代オリエントの町です。ヨシュアのジェリコ攻略を歌っています。

このように、ゴスペルの曲は意外と身近にあるものです。アフリカ系アメリカ人の神への祈り、魂の叫び、自由への希求の詰まったゴスペルの曲は、現代の日本で生きる私たちにも勇気と希望を与えてくれるのです。

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